「人としてよりよく生きていくことの基本」 川崎市立下平間小学校 樋口先生 ~1人1台端末時代の情報モラル教育インタビューVol.01~

下平間小校長先生
早くから積極的に、情報モラル教育に取り組んでいる川崎市立下平間小学校の樋口校長。今後の学校における情報モラル教育のあるべき姿について伺いました。

学校ごとに異なる意識、だからこその“オーダーメイド

 

ー今年度から、「児童生徒に一人一台端末」がスタートしました。学校現場の準備の様子はいかがでしたか。

 

樋口校長:

急ピッチで準備を進めました。日頃から情報教育に熱心な学校や先生は、「まずは情報モラル教育が重要だ」と言っていましたが、学校ごとに意識は大きく異なりますね。

 

ー御校でも、当社の情報モラル教育の授業や教材ご利用いただいています。 当社の強みは、まず学校の<実態調査>を行い、学校・学年ごとの実態に合わせて<指導案や教材をアレンジし、提供できることです。

 

樋口校長:

そうですね。“オーダーメイド”で対応していただけることは、大手キャリアにはないメリットです。

実態調査・通信イメージ

 

ーこれまでは、情報モラル教育は「各家庭で行うべき」という考えも多かったですよね。 一人一台端末がスタートすると、今後はどうなるでしょうか。

 

樋口校長:

その学校でどれだけICT※を活用しているかで、オーダーメイドの内容が異なってくると思います。1日1回は必ず触らせる、ログインさせる、そういう指導を行っている先生なら、情報モラルの必要性もよくわかっているし、子どもたちの心にぐっと入っていくような教育ができるでしょうね。

※ICT… Information(情報)and Communications(通信) Technology(技術)

 

ー教育ネットでは、子どもに実際に体験させながらどんな問題が起こるのか、どう使えばいいか考えさせる授業を行ってきました。
やはり、実際に使わせることが大事ですね。

 

“情報モラル”をよりよく生きていくための”スキル“に

 

樋口校長:

情報モラルを大切にするということは、人としてよりよく生きていくことの基本になるんだろうなあ。情報モラル教育の必要性をよくわかっている先生は、日頃の指導や、ちょっとした声掛けひとつを見ても力のある先生ですし、びっくりするような素晴らしい情報モラル教育します。

 

ー教育ネットとしては、そういう力のある先生の授業を他の学校にも伝えていきたいんです。
伝えることで、一人でも多くの先生に「うちもやってみよう」と思っていただくことに我々の存在意義があるのかなと考えています。

インタビュー時の様子

樋口校長:

2000年に情報モラルが学習指導要領に盛り込まれた当初は、知識・理解(技能)が中心でした。 次の段階として、情報をどう使っていくか、思考・判断が重要になってくる。 さらにその次のステップでは、情報を使って、どんな豊かな人生を送っていくかと考えられるところまで目指す。そういう段階を踏む必要があると思います。 さらに言えば、学校教育だけで終わりではなく、社会に出てからも、よりよく生きていくためには必要なスキルになっていくでしょう。 これまでも言われてきたことですが、それがより現実的になってきました。

 

ー「情報モラル」は良い面も悪い面も、両面を教えることで、思考力・判断力がついていくと思っているのですが、学校現場からは「危険性について教えてほしい」という要望が強いんです…。

 

樋口校長:

これからは変わっていくでしょうね。
たとえば、動画を作ってYouTubeにアップするといった授業をしたときに、どういう動画が世の中の人に受け入れられるのかを考えさせ、「自分だけいいと思ってもだめなんだ」と気づかせる。それって既に情報モラル教育ですよね。
そんなふうに、情報モラルという授業があるというより、様々な教科の中に自然と情報モラル教育が入ってくる。そうあるべきだと思いますね。
そのためには、教員も相当な力量が必要ですが…。

 

情報モラル教育の現状とこれから

 

ー教育ネットでは、情報発信を疑似体験させるツールで、実際に書き込みや投稿をしながら、体験による学びを大切にしています。 これからは、一人一台端末で教育用のクラウド※画面を見ながら、クラス内、学校内だけといった安全な環境で、情報発信をさせる授業ができる訳です。すると、いいコメントをもらえたり、たくさん閲覧してもらえたり、良い体験もたくさんできますよね。 そういう「良い面」も体験させながら学ばせていきたいんです。

※クラウド…安全な環境下で、情報発信の疑似体験ができる教育用サービス

樋口校長:

ぜひやってみたいのですが、関心が高く力量のある一部の先生に限られるのではないかと…。 何が一番のネックかというと、教科で教えるべきことは減っていない、授業時数も増えていない、それなのに情報モラルはやらなければならない。 また、一人一台端末になったことで、それに慣れるために10時間や20時間は必要になる。時間が足りないのです。

クラウド上に投稿している子どもたち

クラウド上に投稿している子ども達の様子

 

ー今、「従来の情報モラル教育は間違っていた、これからは“デジタルシチズンシップ※”だ」という意見も聞かれます。今までの情報モラルは、光と影の両面ある中でたまたま影の部分だけが強調されてきただけのことで、従来の情報モラル教育が間違っていたわけではないと思うのですが、先生はどう思われますか?

※デジタルシチズンシップ…情報技術の利用における適切で責任ある行動規範

樋口校長:

間違いとは言えないんじゃないかな。細かい部分を見れば、今の時代とは合わないものもあるでしょうけど、そのときは、時代が必要としていたからやらなければならなかった。しかし、10年20年たって振り返ってみたら、別の方法もあったかもしれないと感じる。そういうことは、情報モラルに限らず何にでも起こりうることです。

 

ー情報モラルという言葉自体にネガティブな反応を示す先生もいます。

 

樋口校長:

情報モラルというと、「危険性を教えればいい」と思っている先生は確かにいます。
しかし、そうではなくて、「人間が生きていく上で、情報モラルって大事だし、情報モラルという教科はないけど、あらゆるものに関わっている」ととらえることができれば、変わってくるのではないでしょうか。
もしかしたら、「情報モラル」と言うより「ネットリテラシー」と言ったほうが、特に若い先生にはしっくりくるかもしれません。

 

ーそうですね。確かに「モラル」と言われると、「若い人はモラルがない(常識がない)」といったネガティブな連想する人もいますが、「リテラシー」なら、これから向上していこうとポジティブにとらえられる気がします。

 

樋口校長:

リテラシーという言葉は、様々な分野の知識や活用能力をさし、社会でもよく使われるので、入りやすいと思います。 生きていく上で、相手を嫌な気持にしないことも大事ですし、人と上手にコミュニケーションをしていくことも大事です。 そう考えると、情報モラル=❝生きていくためのリテラシー❞とも言えます。 情報の時間だけでなく、道徳の授業でも、よりよいクラスづくりのためにも使える。 今後は様々な学校教育の中で取り込んでいく必要があるでしょうね。